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アエネーアースの旅路

ウェルギリウス『アエネーイス』で語られるアエネーアースの旅路。トロイアからローマへと向かう道のりの地図と解説を掲載。


地図

主要な通過点を掲載した。場所は、地中海の東側、ギリシア、イタリア、アフリカ北部などの地域。
ウェルギリウスの『アエネーアース』についてや、参考文献等は下記の関連事項を参照のこと。

 アエネーアースの旅路

アエネーアースの旅路 アエネーアースの旅路:現在の地理との対応
現在の地図上に上記の地図を重ねたGoogle Mapへのリンク。


概説および詳細地図

ウェルギリウスの『アエネーイス』で、アエネーアースが航行した主な土地を概説。
上記の地図に記した土地の現在の位置へのリンクを張っている。リンク先はGoogle Mapで、該当の場所に印をつけている。

 トロイア戦争の11年目、アカイア勢(ギリシア軍)によってトロイアは陥落した。トロイアの王族アエネーアースは神々の導きに従ってイタリアへと向かうこととなる。

 まず、トロイア(トローイア、Troia)の南にある港町アンタンドロス(Antandros)のそば、イーダ(Ida)山のふもとで艦船を造る。その地の岸から出航し、トラーキア人の土地に城市アエネアダエ(Aeneadae)を建設しようとした。しかしそこが不吉な地であったために都市の建設を断念して、再び船でエーゲ海を南下する。それから、デーロス島(Delos)へと赴いてアポロンの神託を聞いた。アエネーアースらは神託によって示された定住すべき土地がクレータ島(Creta)であろうと推測して目指す。そして、到着したその島にペルガマ(Pergama)と名づけた都市を建設し始めたが、神が示した地でなかったことが明らかとなった。そのときさらに神が現われて、目指すべき地がイタリア(Italia)であることが告げる。

 それから出航した一団は、3夜のあいだ海をさまよって、4日目にイオニア海の群島ストロパデス(Strophades)に着く。その島には乙女の顔を持つ鳥の怪物ハルピュイアたちがいて、アエネーアースたちは島から退散した。そこから北上し、オデュッセウスの生まれたイタケー島(Ithake)などを過ぎて、レウカス島(Leucas)の南端の岬レウカーテー(Leucate)に上陸する。その地でしばらく過ごしたあと、また北に船を進め、エーピールス(Epirus)の沿岸を進んでブートロートゥム(Buthrotum)に到着した。その地域を、トロイア人のヘレヌスが支配していた。しかも、ヘクトルの妻であったアンドロマケーが、今はヘレヌスの妻となってその地に住んでいて、アエネーアースと再会を果たす。それから、アエネーアースは預言者でもあるヘレヌスから今後進むべき航路を教えられ、出航する。

 近くのケラウニア(Ceraunia)の岬へと進み、そこからイタリア半島へと渡り、ラキーニウム(Lacinium)の岬に着く。さらに、スキュラケーウム(Scylaceum)を過ぎ、スキュッラ(Scylla)とカリュブディス(Charybdis)が住むという海の難所を避けながら通過した。しかし、たどり着いた場所は、ひとつ目の巨人キュクロープスたちが住む土地であった。そこで、かつてオデュッセウスの従者であったが、取り残されていたアカエメニデスと出会う。

 なんとかキュクロープスの手から逃れたアエネーアースたちは、シチリア島(シキリア、Sicilia)を迂回するために南下する。風に乗ってメガラ湾(Megara)とタプスス(Thapsus)を過ぎ、プレーミュリウム(Plemyrium)岬を通る。さらにシチリア南端のパキューヌス(Pachynus)岬を通過し、カメリーナ(Camerina)とゲラ(Gela)の町、アクラガス(Acragas)の城塞都市を過ぎて、ドレパヌム(Drepanum)の港に到着する。この土地で、アエネーアースの父アンキーセースが亡くなってしまった。

 そこから北上しイタリアを目指そうと船出したところ、女神ユーノーによって嵐が起き、アエネーアースたちは女王ディードーが治めるカルタゴ(カルターゴー、Carthago)に漂着する。ちなみに『アエネーイス』はアエネーアースが嵐のためにカルタゴに漂着するところから物語が始まり、上述のトロイアからドレパヌムまでの旅路はディードーへの語りのなかで明らかにされる。

 カルタゴを後にしたアエネーアースたちは、嵐のためにシチリア島の港町エリュクス(Eryx)に着く。その街はアエネーアースの父アンキーセースが亡くなったドレパヌムのそばであった。その地で、アエネーアースは亡き父に対する奉納の競技祭を行なう。その後イタリアに向けて出航し、ネアーポリス(ナポリ)の西15キロほどのところにあるクーマエ(Cumae)の岸辺に着く。その地で、クーマエの巫女シビュラの案内によって、冥界へと入り、亡き父アンキーセースと再会する。

 クーマエから北上したアエネーアースたちは、カイエータ(Caieta)の港町に停泊する。その後、キルケーが住む土地の海岸、キルケーイー(Circei)の岬を通過して、遂に新たなトロイアを築くべきラティウム地方の海岸、ラウィーニヌム(Lavinium)の町にたどり着く。アエネーアースたちはこのあと、トゥルヌスとの戦いなどを経てこの地に定住することとなるが、『アエネーイス』はアエネーアースがトゥルヌスを一騎打ちで破るところで終わる。


関連事項

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このページの最終更新 2007/9/9
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