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「SPQR」

    「SPQR」

 古代ローマでは、あちらこちらに「SPQR」の文字が刻まれていました。これは、「Senatus Populusque Romanus」の頭文字をとったものです。意味は「元老院とローマの市民」で、ローマの構成員(主権者)を表すものでした。

 この言葉で、ローマ自体を指し示すこともあります。演説などの時に聴衆への呼び掛けに使う言葉でもありました。「レディース・アンド・ジェントルマン」みたいな感じです。さらには、政府の公式のサインでした。軍旗にも、貨幣にも、公文書にも記されています。公的な建物にも記されていたので、街中で目にすることができました。
 余談ですが、映画「グラディエーター」に出てくるローマ軍兵士の腕にも「SPQR」のタトゥーが彫られていました。

 実はこの「SPQR」、いまでもローマの至る所で目にすることができます。現在のローマ市の紋章になっていますし、マンホールの蓋などでも見かけます。

 さて、この「SPQR」は「Senatus Populusque Romanus」の頭文字とったと言いましたが、この「que」の部分、ちょっとおかしい気がしませんか?頭文字なのに、語頭にない。私がラテン語を初めて学んだとき、「que」という語尾が辞書に見つからずにちょっと焦りました。

 以下ではこの「que」を中心に少し見てみましょう。


ラテン語の「que」

「Senatus Populusque Romanus」の単語を細かく見てみましょう。各語の意味と品詞は以下のようになります。

Senatus 「元老院」(名詞)
Populus 「市民」(名詞)
que 「そして」(接続詞)
Romanus 「ローマの」(形容詞)

英語に訳すと「The Senate and the Roman People」となります。

さて、ここで注目したいのが「que」(そして)の位置です。「que」は「Senatus」と「Populus」を結びつける接続詞です。意味は英語の「and」と同じ意味ですが、「Senatus que Populus」とはなりません。「que」は接続したい言葉の後ろにおいて、必ず単語の語尾に付きます。「que」は「Populus」とは別の単語ですが、「Populus」の語尾に付いているわけです。ちなみに、辞書では「-que」と記されています。

このように、「que」は一つの単語とみなすことができますが、単独では用いず、くっ付けた単語とその前を結び付ける後置の接続詞です。というわけで、「SPQR」は4つの単語、「Senatus」「Populus」「-que」「Romanus」の頭文字からできているのです。


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