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Publius Vergilius Maro

 プーブリウス・ウェルギリウス・マロー(Publius Vergilius Maro)


人物

紀元前70-12。
ローマの詩人。北イタリアのマントゥア(Mantua、現在のマントヴァ)郊外の農村出身。彼が17歳のときに、ローマではカティリーナ一派の反乱がおこり、10代から20代前半まではカエサルとポンペーイウスが支配権を争っていた。カエサルが暗殺されたときには25歳。オクターウィアーヌスが内乱を治めた前31年のときには、彼は39歳だった。51年間の生涯のうち、29年間は戦争の最中にあり、さらにそのうち16年間は内乱の時期にあった。

ウェルギリウスはクレモーナ、ミラノ、ローマで教育を受けた。彼が『農耕詩』書いていた紀元前36年ころは、ローマとナポリに暮らしていて、以来ここにほとんど定住した。ギリシアへの遊学から帰国する途中ブルンディシウム(ブリンディジ)で死去。

ポッリオーの庇護を受けるが、『牧歌』発表後には、マエケーナース、さらにオクターウィアーヌスのサークルに入る。
ダンテの『神曲』では、ウェルギリウスは導師として描かれ、ダンテを案内する。


作品

ウェルギリウスには、ヘクサメトロスで書かれた3つの作品が残されている。ヘクサメトロスの伝統は彼によって受け継がれ、ラテン文学のヘクサメトロスは彼によって完成の域に達した。

『牧歌』(Bucolica):『詩選』(Eclogae)とも呼ばれる。全10歌。
『農耕詩』(Georgiva):全4巻
『アエネーイス』(Aeneis):全12巻


日本語訳書

・小川正弘(訳)、ウェルギリウス『牧歌、農耕詩』、京都大学学術出版会、2004
・岡道男、高橋宏幸(訳)、ウェルギリウス『アエネーイス』、京都大学学術出版会、2001

・泉井久之助(訳)、ウェルギリウス『アエネーイス』(上)(下)、岩波文庫、1997

《コメント》
五七調で訳されたアエネーイスです。賛否両論ありますね。

・河津千代(訳)、ウェルギリウス『牧歌・農耕詩』、未来社、1981
・小野塚友吉(訳)、ウェルギリウス『アエネーイス:ローマ建国神話』、風濤社、2000

その他の文献は、「ウェルギリウスの参考文献」をご覧ください


『牧歌』(Bucolica)

全10篇の詩集。古伝では前42年に始め3年間で書き終えたとされるが、第10歌がエレゲイア詩人のガルス Gaius Cornelius Gallus に捧げられたものであることから、前37年ころに完成したと考えられている。

前3世紀のアレクサンドレイアの詩人テオクリトスが牧歌詩の形態を完成した。ウェルギリウスは、テオクリトスの『牧歌』をラテン文学に再現しようと試みて、『牧歌』を試作した。

全10篇のなかで、様々な牧歌的な主題を扱っている。ただし、単に牧歌的な世界を描くのではなく、理想的牧歌世界を、現実的で都会的な社会、さらには戦争や内乱などによって疲弊した同時代の社会的苦難と対比させながら描く。人生の大半で戦争を経験したウェルギリウスならではの着眼であろう。

牧歌的な生活を営む理想的な自然の情景は、「ロクス・アモエヌス(locus amoenus)」と呼ばれる。このような牧歌的情景は、ヨーロッパ文化の伝統のなかに受け継がれ、文学ばかりでなく、絵画等にもしばしば描かれている。

et in Arcadia ego

例えば、バロック時代のフランスの画家ニコラ・プッサン(Nicoras Poussin、1594-1665)は「et in Arcadia ego」という作品を残している。この文言は牧人たちが見つめる墓碑に刻まれており、「私もまたアルカディアにいた」と「私(死)はアルカディアにもいる」との二つの意味が重ねあわされている。前者は墓に眠る人物がアルカディアに住んでいたことを、後者は、ウェルギリウスの『牧歌』で理想的牧歌世界として描かれるアルカディアにもまた、「死が存在する」ことを意味する。

第4歌では、黄金時代を再興する子供を予言しているかのような主題が扱われている。キリスト教徒はこれを救世主誕生の予言であるた。そのために、ウェルギリウスは中世を通じて予言者の名声を得ていた。


『農耕詩』(Georgica)

全4巻。紀元前36年に書き始められ、29年に発表したとされる。この時期は、アクティウムの海戦でオクターウィアーヌスがアントニーヌスとクレオパトラを破って、内乱を治めて間もない頃。ウェルギリウスはこのときに40歳だった。

『農耕詩』は教訓詩の伝統に位置づけられ、紀元前8世紀末ころのギリシア詩人ヘーシオドスの『仕事と日』を模範としている。ローマ共和政末期の哲学者であり詩人であるルクレーティウスの教訓詩『物の本質について』と並んで、ラテン文学における教訓詩の代表作とされる。

オクターウィアーヌスの腹心で、文芸保護者として名高いマエケーナースの命でこの詩を書き始めたとウェルギリウスは述べている。


『アエネーイス』(Aeneis)

全12巻の英雄叙事詩。「アエネーイス」とは「アエネーアースの物語」を意味する。ラテン文学のなかでもっとも有名な作品。ローマ建国の叙事詩であり、ローマ人にとってのアイデンティティーの構築を担った。ウェルギリウスはこの作品のために10年間を費やした。紀元前19年、大部分は出来上がっていたものの、未完成のままウェルギリウスはこの世を去った。その死の時に、『アエネーイス』を破棄するようにと遺言したが、未完成のままでも十分に完成度の高かったこの作品を、オクターウィアーヌスが出版した。

学識にあふれたこの作品は、ギリシア、ヘレニズム文学の伝統を受け継ぎ、同時代のラテン文学の影響もいたるところに認められるが、主としてホメロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』を模範としている。とりわけ前半の6巻では『オデュッセイア』を、後半の6巻では『イーリアス』を強く意識している。

・トロイアからイタリアへと向かう「アエネーアースの旅路」をこちらに掲載いたしました。


関連事項

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このページの最終更新 2007/9/10
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